「万事快調 オール・グリーンズ」
ゆるゆるの脚本とキレのない演出で、おそらく原作はもっと爽快なのだろうが、だらけた青春映画に仕上がった一本だった。エピソードの構成が実に悪く、背景の家庭ドラマも希薄、結果、薄っぺらい作品になってしまったのはちょっと残念。でも出口夏希を見にいっただけなので十分満足できた。監督は児山隆。
東海村、高校二年生の秀美が大好きなSF小説を教室で読んでいる場面から映画は幕を開ける。クラスの人気者で映画マニアの美流紅はこの日も大勢のクラスメートに囲まれて明るく振る舞っている。秀美の家庭は父が暴力的で、駅前でラップをするのが楽しみだった。ある夜、ラップ仲間からレコーディングの仕事をしている佐藤が秀美の才能に注目しているからと佐藤のスタジオに誘われる。行ってみれば、単に秀美の体が目当てだけだと知り、秀美は佐藤を殴り倒して気絶させ、金庫から金を取ってやろうとするが中にあったのは大麻の種だった。
学校の機械実習時、誤って小指を落としてしまった美流紅は、以来友達からは疎まれ、クラブも辞めてしまっていた。彼女の母はシングルマザーで、妙な推しにハマっていた。毒舌で漫画大好きの真子もまたクラスメートだった。ある夜、秀美が夜の交差点に差し掛かると、子供連れの女性が車と衝突する現場と遭遇する。後日その女性は亡くなったと聞かされるが、その現場に真子や美流紅もいた。
いつものように秀美がラップで遊んでの帰り、美流紅に声をかけられる。二人は意気投合し、ボーリング場へ行くがそこでバイトしている真子と出会う。彼女もまた不満が募っていた。秀美は二人に、先日盗んだ大麻の種を育てて一儲けしようと提案する。三人ともこの街を出たがっていたこともあり、三人で園芸部の同好会を結成し、屋上のビニールハウスを使うことを考える。三人はオール・グリーンズと名乗る。やがて栽培を始め、二カ月後、大麻が収穫されるが、ビニールハウスで抱き合っていたゲイのクラスメートと知り合い、彼らに売人をさせることで仲間に入れる。
秀美が好きなSF小説をくり抜いてそこに大麻を隠して街で売り捌き、それなりにお金が溜まっていく。さらに儲けるために、精製するべく科学部の友達藤木を引き込む。ところが、佐藤が秀美に近づいてきて1000万の金を要求される。美流紅の提案で、残った大麻を東京で売り捌いて三人でそのまま逃げる計画を立てたが、東京で大麻だけ騙されて取られてしまう。仕方なく三人は地元に戻る。
やがて三年生の卒業式の日が来る。秀美は一人屋上へ行き、ビニールハウスにガソリンをまき、佐藤を呼び出す。そして佐藤がハウスに入った途端ビニールハウスに火をつける。大爆発がし、卒業式にいた学生が外に飛び出す。そこに美流紅もいた。屋上を見上げると秀美が屋上から飛び出し、階下のトタン屋根に落ちて颯爽と校門を出ていってしまう。佐藤は大麻栽培で警察に捕まってしまう。こうして事件は終わり、その後の三人がどうなったかというテロップが出るが、そんなはずはないと絶叫する美流紅のシーンで映画は終わる。
プロローグがやたら長く、三人が犯罪に染めるまでがだらけてしまう。さらに、リアリティに欠ける大麻処分はともかく、どこかしこに雑な脚本の筆致に、緊張感も何もなく展開していく。完全にファンタジーだと割り切ってみたところで、そこに青春映画の面白さも出ていないし、登場人物の演出が未熟で、どの人物も魅力がなさすぎる。悪人もあまりに弱いので、物語が盛り上がってこない。なんとも残念ながら、出口夏希は可愛いし、それで十分、そんな映画だった。
「ウォーフォア 戦地最前線」
2006年イラク戦争の真っ只中、民家に立て籠もり監視部隊として駐留していた米軍の一隊が敵兵に襲撃され、負傷者を庇いながら脱出するまでを描いた緊張感あふれる一本で、わずかの時間の救出劇のみに焦点を集めた作りは非常に潔い仕上がりになっているし、ラストシーンまで目を離せない迫力がある映画だった。監督はレイ・メンドーサ、アレックス・ガーランド。
2006年、イラクのラマディ地区、セクシーなエアロビクス動画を見るとイラクに駐留する米兵の姿から映画は幕を開ける。夜間、イラクの民家に立て籠もり、敵兵を監視する任務についた兵士達は、立てこもった民家で一般人を部屋の隅に拉致して、外の動向を監視し始める。ところが突然手榴弾が窓から投げ込まれ、狙撃兵のエリオットが負傷する。どうやら屋上に敵が集結しているらしいと考えた隊は、負傷者救出と救援を要請する。
やがて戦車が到着し、負傷者を回収すべく兵士たちは行動するが、突然IDE爆弾が炸裂し、戦車が吹っ飛んだ上、護衛に出た兵士たちも負傷してしまう。一瞬のことで土煙で周りが見えない中、隊はとりあえず建物に避難するが、二人の重症者がでてしまう。外では敵の攻撃が激しくなり、増援もむずかしくなってくる。威嚇のためのジェット機の飛行を要請しながら、重症者を介抱し、ようやく増援が到着する。
重症者をまず搬送し、続いて2台の戦車がやってくる。屋上に敵が集結していると判断した隊長は、2階以降を戦車で攻撃するように指示し、やってきた戦車に全員避難してその場の脱出に成功する。全てが終わり、拉致されていた一般人が外に出てくる。不気味な静けさだけが残って映画は終わる。
ほんのわずかな時間と空間のみに焦点を絞ったシンプルな作りの映画で、実際にイラクに行った監督も撮影に参加し、記憶と写真でリアルに再現した作品という緊迫感が半端ではない映画だった。さすがA24作品という一本でした。
「28日後…白骨の神殿」
独特の宗教感、世界観、終末思想を盛り込んだホラー作品ながら、全体にはかなりグロテスクなシーンを散りばめるので目を背けてしまう映画だった。終盤は映像美学にこだわった演出がなされているが、さらに続編に続く連続ドラマ的なエンディングは正直そろそろマンネリ化を感じてしまいました。監督はニア・ダコスタ。
一人の少年スパイクが、悪魔崇拝をするカルト集団「ジミーズ」のメンバーになるためのデスゲームをしている場面から映画は幕を開ける。劣勢になったスパイクは相手の油断の隙をついて太ももを刺し倒してしまう。そして、カルト集団に参加することになるが、リーダーのジミーは、忍び込んだ家の家族を拉致して生皮を剥ぐ残忍な殺戮を繰り返していき、中にはジミーについていけないメンバーもいた。
その頃、ケルソン博士は、森に住み、ウィルスによって凶暴化したサムソンに自身で作った薬品を塗った吹き矢でおとなしくさせ、その薬品の効果を実験していた。何度か繰り返すうちになんらかの効果が見られ始めたが、いずれ薬が切れると元に戻ると危惧したケルソン博士は、正常な間に命を断つべく注射しようとする。しかし、その寸前、サムソンは言葉を発したので注射をやめる。ケルソン博士は、さらに精神病の薬を追加して、回復するか試すことにする。
ジミーの集団は、次の目的地を目指すためにメンバーの一人の女性ケリーを偵察に出していたが、彼女ははサムソンと親しく話すケルソン博士を発見し、彼こそジミーがいつも言っている覇者=ジミーの父だと思ってジミーに報告しに戻る。その頃、ジミーたちは拉致した家族を惨殺していたが反撃されて、炎に包まれ、なんとか脱出したばかりだった。ケリーの報告を聞いたジミーはケルソン博士が見える森まで行き、先に自分が交渉してくると言って一人ケルソン博士に会いにいく。
サムソンはすっかり元の人間になり、襲ってくる感染者を倒していた。ケルソン博士に会ったジミーは、実は自分は牧師の息子だが、これからも集団のリーダーとして君臨したいのでケルソン博士にあることを依頼する。やがてジミーらのメンバーはケルソン博士のところへ謁見に来る。ケルソン博士は、悪魔崇拝のレコードをかけ、白骨の塔に炎を灯し、自ら仰々しく踊り狂って、悪魔のふりをする。それはジミーと約束したお芝居だった。そして最後に、ジミーに従うように命令したが、スパイクがメンバーにいることを知ったケルソン博士は、ジミーを、キリスト同様に磔にすべきだと、約束していない命令を出す。慌てたジミーはケルソン博士を刺す。しかし、ジミーもケリーに刺され、磔にされる。ケルソン博士はスパイクとの再会を祝すが、自身の命はわずかだった。倒れたケルソン博士のところに正気に戻ったサムソンが現れ抱き上げて去り、その後ケリーとスパイクも去っていく。
のどかな山間の家、父と娘が勉強をしていたが、彼方に不穏な声を聞いたので調べにいくと、二人、おそらくケリーとスパイク、が感染者から逃げている姿を発見、助けに向かって映画は終わる。
クライマックスはかなりシュールな作りがなされていて、前半のスプラッターを払拭してしまうのですが、それでも、不気味な映画だった。

