くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パリのどこかで、あなたと」「日本独立」

「パリのどこかで、あなたと」

想像以上に洒落た素敵な映画でした。ファンタジックでもありヒューマンドラマでもあり、ラブストーリーでもある一本。監督はセドリック・クラピッシュ

 

地下鉄の中、物語の中心になるレミーメラニーが隣同士の席に座っているショットから映画は幕を開けるが、お互い知り合いでもなんでもない。レミーは配送センターに勤めていて、近々昇進が決まっているが一方同僚はリストラで退職させられ、複雑な気持ちになっている。そんなストレスから彼は不眠症だった。ここに免疫療法の研究をしているメラニーは、近日、研究発表の責任を負かされることになっていたが、過眠症で悩んでいる。

 

メラニーレミーは違うアパートだがほぼ隣同士に住んでいる。それぞれが医師の勧めで心療内科をうけるようになっている。レミーは幼い頃癌で死んだ妹への想いがいまだに残っている。メラニーは女性と出て行った父親への思いに悩んでいる。二人はいつも近くのエスニックショップに出かけているが、親しくなることもない。

 

メラニーは、ストレスを発散するためマッチングアプリに参加し、出会った男性と関係を繰り返すがどこか満たされない。レミーマッチングアプリに参加した物の、出会いにならない。職場で知り合った女性を自宅に招いてもうまくいかない。たまたま猫を押し付けられ、嫌々飼い始めたが、いつのまにかハマっていく。しかしその猫が突然いなくなる。一方メラニーはたまたまゴミ置き場で猫を拾う。レミーが飼っていた猫である。

 

メラニーは研究発表をなんとかこなし、心理療法士との治療の勧めもあり父とも会い、一歩前に進み始める。一方のレミーは担当してもらった心理療法士が引退することになるが、レミーは仕事を辞め新たな一歩を目指すことにする。

 

レミーはかねてからダンスに興味があり、いつもいくエスニックショップの店長から勧められていた教室に出向く。そして基礎的な動きの後、ペアになりましょうという言葉にメラニーを紹介され、二人で踊り始めて映画は終わる。

 

出会うようで出会わない二人のそれぞれがさりげなく交錯しているショットを何度も繰り返しながら、ラストでついに出会うという構成がとっても素敵で、エスニックショップの店長が二人の仲介役としてさりげなく登場するのも上手い。なかなか映像のリズム感がないとできない映画だと思います。掘り出し物でした。

 

「日本独立」

吉田茂白洲次郎の活躍の映画だと見ると完全に視点が狂う。日本国憲法成立にかかる物語であって、この視点を誤ると映画の評価を履き違えてしまいます。錚々たる役者を揃え、ものすごいメイクで小林薫を完全に吉田茂にした、ある意味カルトなくらいしっかり作られた作品でした。監督は伊藤俊也

 

時は終戦を迎えんとする日本、すでに当初から敗戦を予期していた白洲次郎は田舎に引っ込んで自給自足の生活をしている。マッカーサー率いるGHQが乗り込み、終戦後の日本の処理を始める。近衛内閣が近衛文麿の自害によって新しい内閣となり外務大臣となった吉田茂は英語に堪能な白洲次郎をその副官として呼び寄せる。

 

映画はGHQが提案する新憲法の草案に必死で抵抗する政府の姿を丁寧に描いていく。そこにサスペンスも人間ドラマもなく、敗戦国である日本が最終的にGHQの草案の大半を飲まざるを得なくなる展開をひたすら描く。

 

淡々とした史実に基づくドラマですが、さすがに芸達者が顔を揃えるとセリフの一つ一つだけで映像が成り立つから見事である。映画としての仕上がり云々より、こういう骨のある作品もあって良い物だと感慨に耽ってしまいました。