くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

2012-01-01から1年間の記事一覧

映画感想「喜びも悲しみも幾歳月」「新・喜びも悲しみも幾歳月」「風

「喜びも悲しみも幾年月」 かなり以前に見た作品だが、この年になって本当のこの映画の価値がわかるものかと再見。この作品、前半の第一部よりも後半の第二部の方がカメラショットといいドラマ性といいしっかりとしてくることに気がつく。確かに前半は主人公…

映画感想「アベンジャーズ」

この手の映画はとにかくおもしろいかおもしろくないかだけで十分かもしれないが、映画としてレベルが高いかどうかはもう一度見たくなるかどうかではないかと思う。その点、この映画は面白かったけれどももう一度見ようとは思わない。同じ二時間以上ある「ダ…

映画感想「桐島、部活やめるってよ」

ちょっと不思議な映像感覚で私好みの吉田大八監督の最新作。期待通り、ちょっと風変わりな青春群像劇の秀作でした。大満足の一本。映画は「金曜日」というテロップから始まり、ある高校のとある金曜日の一日が繰り返し繰り返しオーバーラップしながら語られ…

映画感想「トータル・リコール」(2012)

8月10日に父が急逝し、ばたばたですごした一週間が終わり、少しずつ元の生活に戻そうと久しぶりに劇場へ息子と一緒に足を運んだ。この一週間で見逃した映画はたくさんありますが、父の面影に浸る毎日にとても映画を見る気分ではなかったことも事実だった…

映画感想「こうのとり、たちずさんで」「霧の中の風景」

「こうのとり、たちずさんで」 公開当時見たのだが、ちょっと記憶が薄れているので再度見直しました。お世辞にも娯楽映画とはいえない。延々とした流麗なカメラワークと長回しで描く圧倒的な映像表現の美しさに目を奪われるものの、スローテンポで語られてい…

映画感想「生きてゐる孫六」

関の孫六という刀といえば名刀の誉れ高い一品。その刀を中心に古い因習にとらわれた田舎町の人々のほほえましくも人間味あふれる人情喜劇です。製作されたのが1943年と第二次大戦まっただ中なので、冒頭で兵士の教官が延々と日本国の軍人としてどうある…

映画感想「ユリシーズの瞳」

決して娯楽映画とは呼べない。テオ・アンゲロプスならではの長回しによるロングショットの連続と重厚な画面づくりの3時間足らずはさすがにしんどいというのが正直なところである。しかし、作品は群を抜いたハイレベルの完成度にはうならされる。モノクロー…

映画感想「野菊の如き君なりき」

木下恵介監督のこの作品の感想を書くのは二度目です。 5年前に始めてみたときは一緒にみた「紀ノ川」が余りにすばらしくて色あせて見えたが、今回見直してみるとこれはこれですばらしい映画だったことに気がつきました。ラストシーンは涙が止まらず、徹底的…

映画感想「少年期」

とにかく絵の美しさに目を奪われる。遠くに山々をいただいた近景に小さく点景のように配置する人々のショットや登場人物が歩きながらはなしているバックに農作業をする人々が配置される構図、さらに見上げるようなショットの背後に大きく膨らんで見える入道…

映画感想「破れ太鼓」「遠い雲」「惜春鳥」

「破れ太鼓」 しゃれたモダンコメディの傑作。阪妻の並外れたカリスマ性に驚かせる作品でした。全く木下恵介のジャンルの幅の広さには感服します。一見、日本の映画なのにどこかエキゾチックなおもしろさがあるし、空間を通り越した演出の見事さ、さりげなく…

映画感想「結婚」

昭和22年製作という社会的な背景はさすがに当時を生きてきたわけではない私にはとうてい語ることはできないが、映画としてのこの作品を見ると、なかなかの佳作だったように思えます。とにかく映像のリズムが非常に分かりやすい。主人公文江と積と、あるい…

映画感想「屋根裏部屋のマリアたち」「ベティ・ブルー/愛と激情の日

「屋根裏部屋のマリアたち」 ちょっと魅力的な佳作に出会ったという感じでした。ハートフルであったかくなるようなしゃれたコメディ、そしてなぜかほほえましくなるようなラブストーリー、そのふわぁっとした境界のないおもしろさに曳かれる一品だった気がし…

映画感想「ダークナイトライジング」

新バットマンシリーズの最終章、クリストファー・ノーラン監督作品でこの夏洋画の最大の期待作を見てきました。前作「ダークナイト」が群を抜く傑作であり希代の名優ヒース・レジャーの好演もあって単なるアメコミヒーローものを越えたドラマティックな作品…

映画感想「それでも、愛してる」「この天の虹」

「それでも、愛してる」 ジョディ・フォスター16年ぶりの監督作品。 具にもつかない駄作ではないものの、特に秀でた作品でもなかった。宣伝ではビーバーのぬいぐるみを通じてしかはなせなくなった主人公ウォルター・ブラックのお話かと思ってい亜が、一方…

映画感想「花咲く港」「太陽とバラ」

「花咲く港」 戦時中に作られた、木下恵介監督のデビュー作である。 後に木下監督の名作に登場する抒情的なカットが随所に見られ、しっかりとしたカメラワークと、実験的な映像がふんだんに取り入れられたなかなかの秀作でした。制作されたのが戦時中であり…

映画感想「おおかみこどもの雨と雪」「お嬢さんに乾杯!」「不死鳥」

「おおかみこどもの雨と雪」 大好きな細田守監督の新作は、子供たちの旅立ちをテーマにしたハートフルな物語でした。狼の青年と恋に落ちた花は彼が狼人間であることを承知の上で結婚をします。そして二人の間には活発でやんちゃな姉雪とちょっと物静かなおと…

映画感想「ローマ法王の休日」「The Lady アウンサンスーチー ひき

「ローマ法王の休日」 「息子の部屋」のナンノ・モレッティ監督作品で、何とも不思議な作品でした。ローマ法王が崩御され次の法王を選ぶべく枢機卿たちが集まってくるところから映画が始まる。次の法王を待ち望む民衆が、つい何年か前に現実にもおこなわれた…

映画感想「さらば復讐の狼たちよ」「スープ 生まれ変わりの物語」

「さらば復讐の狼たちよ」 「鬼が来た」の監督作品というだけで見に来た。 「鬼が来た」はみていないので今回がこの監督の作品を初めてみたことになったのだが、なんとも、中国にもこんな荒唐無稽、奇想天外な映像を駆使できる才人がいたとは全く驚きであっ…

映画感想「第五福竜丸」

昭和29年、アメリカがビキニ環礁沖でおこなった水爆実験の犠牲となったマグロ漁船第五福竜丸の事件。事件発生からわずか5年、まだ事件が現在進行形であった時期だと思う。そんなときに新藤兼人が撮った作品がこの「第五福竜丸」である。実際、公開当時に…

映画感想「オープニング・ナイト」

この映画は本当によかった。今回のジョン・カサヴェテス作品特集をみて彼の作品はほとんどが内面に潜む精神的なテーマに関わったものが非常に多かった。本日の「オープニング・ナイト」も一人の女優が公演の初日に向かっている中、一人の若いファンが交通事…

映画感想「グスコーブドリの伝記」「苦役列車」「リンカーン弁護士」

「グスコーブドリの伝記」 杉井ギサブローが創造した一瞬のファンタジーの世界。その感性のなせる自由奔放な幻想の世界はディズニーや宮崎アニメとはまた違った独特の世界を私たちに見せてくれました。原作が宮沢賢治なので根底にあるのは農民たちの苦しさ貧…

映画感想「ラヴ・ストリームス」

ジョン・カサヴェテスの映画はまず取っつきにくい。商業ベースで作った「グロリア」をのぞいて、その作品の世界に入り込むまでがやや時間がかかる。その上大胆なカットでよけいな説明を省いた映像は時に登場人物の関係さえも意味不明になるから大変。果たし…

映画感想「ヘルタースケルター」

前作「さくらん」がなかなか私好みのできばえで面白かったし、当代最高の若手女優と思っている沢尻エリカ久々の出演、しかも周りの脇役も原田美枝子、桃井かほり、大友南朋、寺島しのぶなど超一流どころをそろえているのだから、かなりの期待が大きかった。…

映画感想「きっとここが帰る場所」「夜のとばりの物語」

「きっと、ここが帰る場所」 とにかく、色彩センスの良さ、画面の構図センスの良さ、音楽センスの良さ、カメラのワーキングの美しさに引き込まれてしまう。物語はいたって淡々と進んでいく。ショーン・ペン扮するかつてのロックのスーパースターシャイアンと…

映画感想「アメイジング・スパイダーマン」「ラム・ダイアリー」

「アメイジング・スパイダーマン」 一応シリーズが一段落した前作を完全にリメイクした作品。前シリーズは大好きなサム・ライミ監督作品だったので、それが楽しみな映画でしたが今回は「500日のサマー」のマーク・ウェブに移り、単純に娯楽大作として見に…

映画感想「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」「アメリカの影」

「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」 ジョン・カサベテスらしいドキュメントタッチのカメラワークとクローズアップを多用したリアリティあふれる独特のアメリカンシネマ。主人公コズモを演じたベン・ギャザラがとにかくニヒルでかっこ良く、こんな男がオー…

映画感想「崖っぷちの男」「フェイシズ(ジョン・カサベテス)」「こ

「崖っぷちの男」 題名は実にダサいのであるが、とにかく最高におもしろいサスペンス映画でした。とにかく主人公の周りに登場するわき役が実に見事。主人公ニックに呼ばれて駆けつける女刑事マーサの相棒の刑事ジャック、一見平凡なのだが常にマーサの味方に…

映画感想「ブラック・ブレッド」「少年は残酷な弓を射る」

「ブラック・ブレッド」 どういう風に切り口を求めたらいいのかわかりにくい映画だった。結局、勉強もできて純粋だった主人公の少年アンドレウがある殺人事件で友人の少年が死んだことから次第にその事件の背後に潜む様々な大人の世界の醜い現実が見えてくる…

映画感想「ブレイクアウト」「三重スパイ」

「ブレイク・アウト」 ジョエル・シューマカー監督が描く緊迫のサスペンス。大富豪でダイヤモンドのディーラーを営む主人公カイルが車で自宅に戻るところから映画が始まる。俯瞰で車の姿を追い、ついた家は恐ろしいほどのセキュリティに守られた豪邸。愛する…

映画感想「栄光への5000キロ」

「栄光への5000キロ」 日産サファリラリーチーム監督笠原剛三の原作を元に、日産自動車のバックアップで完成されたラリー映画である。石原裕次郎のスター映画の色彩が強いが、車に搭載されたカメラの映像を巧みに、効果的に利用したレースシーンの迫力が…