「ファミリー・ディナー」 典型的なB級ホラー映画。何かが起こるのではという不穏な空気感で展開していくだけで、これという伏線も凝った演出もなく、ホラー映画だという先入観がラストまで観客を繋いでいく。そして、おそらくそうだったかというラストシー…
「市子」 非常に暗い題材の作品ですが、ラストはなぜがなんとも言えない切ない感情が伝わって来る。たくさんの登場人物を描いているにも関わらず、芯になっている物語がぶれないのは脚本の良さと演出の慣れということでしょう。自身の舞台を映像にしただけの…
「アマゾン無宿 世紀の大魔王」 なんとも珍妙な怪作。錚々たる大俳優たちが奇妙な仮装でコスプレして真面目くさって大立ち回り。しかもお話は無駄に世界規模でオールスターだからもう笑いが止まらない。名作映画を平気でパロディにしたり、あれよあれよと荒…
「ペルリンプスと秘密の森」 アニメ自体は素朴な作りですが、オリジナリティのある色彩と構図がシンプルなお話に彩りを作り出している感じの面白いアニメ作品でした。監督はアレ・アブレウ。 かつて、森にはペルリンプスというのがいたが、巨人がやってきて…
「ブラック・レイン」 初公開以来の再見ですが、当時はこの映画の面白さを理解していなかったかもしれません。アクション映画はこれくらいキレッキレでないとあかんと思います。無駄なシーンは思い切って削ぎ落として、それでいて見せ場は徹底的にハイスピー…
「父は憶えている」 静かな映画ですが、とっても良い映画でした。キルギスの国柄とかは詳しく知りませんが、近代化が進む一方で失われていくものと生まれてくるものが落ち着いた物語と流麗なカメラワークで描かれていく様はとっても美しい。監督はアクタン・…
「電話は夕方に鳴る」 軽妙などたばたコメディサスペンスだが、非常によくまとまっているのは流石に新藤兼人の脚本のうまさだろう。冒頭の軽やかな導入部から、いきなりの本編、そして全て終わって冒頭シーンに戻るという組み立ては絶品。楽しい映画でした。…
「ナポレオン」 大作らしい物量、エキストラを注ぎ込んだ壮大な歴史絵巻という感じの作品で、史実を忠実に淡々と描く一方で、ナポレオンの人間ドラマを英雄としてではなく一人の男として描いていく奥の深さは納得するのですが、史実では年上のはずのジョゼフ…
「リアリティ」 こういう映画を見ると,アメリカ映画の奥の深さを垣間見るように思います。裁判で公開されたFBI捜査官の記録した尋問音声をほぼ忠実にドラマとして再現した作品。リアルタイムで描かれる映像は主人公を演じたシドニー・スウィニーの演技力にか…
「シチリア・サマー」 ゲイ映画なので嫌いなのだが、この映画は思いのほか良かった。実話とはいえ、丁寧に書き込まれた脚本と演出、音楽を効果的に使ったリズム作り、脇役を絵の中に効果的に配置してその表情で語らせる絵作りが実に上手い。そしてそんなそれ…
「サムシング・イン・ザ・ダート」 いろんな映画があるもんやなというのを実感する作品で、ドキュメンタリータッチでもなくフィクションでもなく、監督二人が二人のキャストになって超常現象をカメラに収めるくだりを描いていくというものですが、結局なんな…
「気まぐれ渡世」 90分の尺にするために無理やりその場その場のシーンを追加していったような安直そのものの映画。いくら映画全盛期とはいえ、駄作と言える一本でした。呆れてしまう作品。でも、これも、古き良き映画なのでしょうね。監督は西河克己。 主人…
「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」 シンプルなストーリーになった分、荒唐無稽な茶番劇が普通になった感がないわけではないけれど、なんで埼玉?的な仕上がりの無理矢理感を楽しむにはそれなりのエンタメでした。前作も私としてはそれほど評価してない…
「知と愛の出発」 1958年という製作年の世の中の考え方が顕著に描かれている作品で、学歴至上主義、家柄の考え方、男尊女卑、女性の貞操、輸血の考え方などなど、流石に今見ると考えられないくらい極端に描かれています。にも関わらず女性同士の同性愛を仄め…
「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」 深読みをすれば、東洋人への歪んだ偏見からできた物語のようにも思えるかもしれないが、それをさておけば、ちょっと風変わりな作風の映画だった。ただ、主人公がなぜ人を操ることができる設定にしたのか意味がわか…
「喧嘩太郎」 これだけゆるゆるのたわいない映画にそうそうたる役者が勢揃いしているのは、まさに映画黄金期の一本という貫禄というか余裕というかの作品。こそばゆくなるほど適当なストーリーと展開ですが、とにかく芦川いづみが抜群に可愛らしい。これだけ…
「コーポ・ア・コーポ」 安アパートコーポの住民の物語をオムニバス調で描くゆるゆるの癒し映画です。芸達者なキャストを集めて淡々と描く物語ですが、普通と言えば普通の映画だった。でも、小品ながらまったりした時間を過ごしました。監督は仁同正明。 金…
「アメリ」 十年ぶりの再見。ファンタジックなロマンティックコメディという映像世界は、やっぱり酔いしれてしまいます。オドレィ・トトゥが抜群に可愛らしいし、何もかもが夢の世界、でもとっても素敵なラブストーリー、名作というのはこういうのをいうので…
「007ドクター・ノオ」(007は殺しの番号) 007シリーズ第一作で、テレビでしか見ていない一本をついにスクリーンで見る。格子からの光を多用した画面作りとスピーディなテンポで展開するストーリーで、娯楽映画の面白さをコンパクトに詰め込んだ作りがとって…
「法廷遊戯」 原作は良いのだろう、相当見事に組み立てられたサスペンスと奥の深いメッセージが織り込まれているのですが、いかんせん役者が弱いためにストーリーをなぞっただけの薄っぺらいミステリードラマに仕上がってしまったのは本当に残念な作品。杉咲…
「マーベルズ」 自分たちだけが楽しんでいるのではないかというようなストーリーで、物語の面白さは全くなく、と言ってアクションがすごいわけでもなく、特撮も今時のCGに目新しさもない、さらにヒロインが全然可愛くも美しくもないその辺の人となったら、も…
「蟻の王」 ブライバンティ事件を扱った作品ですが、映画のクオリティは優れているものの、それがかえってこういう同性愛問題を描くには美しすぎる出来栄えになった気がします。ドラマ性もストーリー展開も丁寧で絵も綺麗です。主人公二人も純粋に美しい。い…
「しあわせはどこに」 一昔前の連続テレビドラマという感じのメロドラマで、その意味で懐かしさに酔ってしまう空気感がとっても良い。決して出来のいい映画ではないものに、一昔前のノスタルジーに浸れる一本でした。監督は西河克己。 主人公橋爪淳子がある…
「正欲」 正しい欲望、まさにその核心に迫っていく展開が恐ろしくクオリティが高い。気がつくと、普通と言うものにある意味毒されている自分に気がついてしまって寒気を覚えてしまうようなドラマだった。ストーリー展開の構成のうまさ、映像演出の秀逸さにど…
「青の帰り道」 なぜか見逃していた一本を見る。高校生の友達七人が現実に直面してたどる青春群像劇で、物語としては今更かもしれないが、大きなシーンの転換点で細かいカットを繋いで映像にリズムを作り出していく演出はなかなか上手い。さらに七人それぞれ…
「サタデー・フィクション」 手持ちカメラを多用した縦横無尽のカメラワークとモノクロ映像によるリアリティ、スパイ映画らしい娯楽性を兼ね備えたなかなかの秀作でした。面白かったし、いつの間にか画面に引き込まれる魅力にも満ちていた気がします。監督は…
「ザ・キラー」 Netflix配信映画と思って見ているからかもしれないが、テレビドラマレベルの映画だった気がします。特に名前を語らずに淡々とスピーディに進むお話は面白いのですが、あちこち飛び回る割にはスケールが広がっていかない。でも主人公が全くピ…
「団地 七つの大罪」 たわいない映画ですが、軽快なテンポで流れていくオムニバスストーリーがとっても小気味良い。もちろん時代色はあるのは否めないが、芸達者が生み出す軽妙なリズム感を楽しめるだけでも十分見る価値のある娯楽映画でした。監督は千葉泰…
「暗殺の森」 約十年ぶりの三回目の再見ですが、やはり傑作ですね。ベルトルッチ監督の才能が凝縮されているために難解になっていると言うのは事実ですが、オープニングからラストシーンまで全く無駄のない計算と演出意図を散りばめた映像、ヴィットリオ・ス…
「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」 可もなく不可も無く、たんたん飄々と展開する作品で、これと言って秀でたものもないが、そうかといって貶すところもない映画でした。脇役の立ち位置が見えないので、映画自体は平凡そのも…