「ショコラ」 初公開以来、午前十時の映画祭で再見。やはりこの年で見直すと登場人物の心の中が伝わってくるようで、なんとも言えない感動に包まれました。いくつかのドラマを交錯させる構成ですが、ラストに向かって統一されたメッセージがじわじわと胸に迫…
「アース・ママ」 丁寧に練られたカメラアングルとカメラワークの映像が、暗い話ながら真面目な良質の作品の空気感を醸し出していて、見応えのある映画になっていました。とは言ってもお話はいたって重いので、どんよりとした気持ちのまま主人公の心の葛藤を…
「シャクラ」 原作「天龍八部」が有名な武侠小説らしく、あらすじを知るものが見ればわかりやすいのだろうが、どんどん話が膨らんでいくので、見ている私たちは右往左往してしまい、さらに漢字の名前に翻弄されて物語についていくのがやっとだった。しかしな…
「オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト」 作っている本人はわかっているのでしょうが、ストーリーテリングを考慮せず、映像詩のように展開する一人の女性の半生の物語は、さすがにストレートに展開を読めなかった。しかも黒人の見分けがつかない…
「奴が殺人者だ」 面白い脚本なのですが、全体が雑多に処理された感が強くて、一本筋が通って見えてこないので、主たる話の脇の話が薄くなってしまって、出来栄えは普通になった感じです。面白いサスペンスですが、橋本忍脚本と考えるともう一歩クオリティが…
「枯れ葉」 シンプルなストーリーとウィットに富んだセリフの軽快なリズム、そして、既成曲を巧みに取り入れた選曲によるテンポのいい展開、さらに抑えた赤、青、黄を交えた色彩演出、とにかく知的に面白い、そんな映画だった。監督はアキ・カウリスマキ。 …
「ハッシュ!」 雑多なオープニングからみるみる映画にテンポが乗ってきて、中盤以降は面白くて面白くて、終わってほしくない展開に引き込まれて楽しんでしまう。奇妙なお話ながらとにかく楽しい傑作でした。監督は橋口亮輔。 男同士がベッドで目を覚ます。…
「カサンドラ・クロス」 大流行したパニック映画の終盤を飾る作品ですが、かなり物語が破綻してきているのがわかります。オールスターキャストで所狭しと往年の大スターが登場しますが、ほとんど人間ドラマが吹っ飛んでしまって、しかも終盤は銃撃戦になって…
「エターナル・ドーター」 非常にクオリティの高い作品ですが、地味で暗い展開なので一般公開が見送られたのでしょう。A24作品です。ティルダ・スウィントンが母と娘の二役をこなした会話劇で、夜の物語が大半を占めて終盤に明るいライティングに変わる絵作…
「ショータイム!」 シンプルでたわいない映画ですが、脳天気で楽しい映画だった。ドラマ性もエンタメ性もこれと言って秀でたものはないが、人工の灯りを使った演出が農場という舞台にもかかわらず華やかさを醸し出しているのはとっても綺麗だった。監督はジ…
「錆びた炎」 一級品のサスペンスとまでは行かないものの、ミステリーとしてはなかなか面白い作品でした。中盤の身代金受け渡しのサスペンスから、クライマックスの真相に至る流れがなかなか鮮やかなのもいいし、刑事たちの描写が非常にリアルに描いているの…
「ウィッシュ」 創立百周年の記念大作というより記念作品レベルの映画で、過去の名作へのオマージュを散りばめただけのオリジナリティのない普通のアニメーションだった。ディズニー映画には夢溢れるものを毎回期待するが今回はちょっと残念でした。監督はク…
「銭ゲバ」 荒っぽい脚本で、原作のエピソードを駆け抜けていくような展開は流石に雑な仕上がりになった映画で、主人公のカリスマ性やストーリーの奇抜さ面白さはそっちのけの映画でした。監督は和田嘉訓。 片目が半分潰れていてぶ男な主人公風太郎が寂れた…
「ザ・スパイダースの大進撃」 グループサウンズ全盛期のいわゆるアイドル映画ですが、テンポよく物語が進むので、最後まで気楽に楽しめます。倉本聰が脚本に参加しているのはちょっと逸品でした。監督は中平康。 アメリカから帰ってきたスパイダースの面々…
「ポトフ、美食家と料理人」 緑を基調にした落ち着いた色調と、ひたすら料理をする場面と食べる場面を繰り返すシンプルな展開、そこに不思議なほどに盛り込まれた熟年の男女の言葉にしづらい人間ドラマが静かに深々と心に迫ってくるとってもいい映画だった。…
「ウンタマギルー」 日本復帰直前の沖縄の姿を寓話的な描写で描いていく個性的な作品で、全編沖縄方言なので字幕が出る。不可思議な世界に放り込まれたような不思議な感覚に浸れる映画でした。監督は高嶺剛。 浜辺で頭に槍を刺された白塗りの男が歩いている…
「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」 映画としてのクオリティはテレビスペシャル以下の出来栄えだったかもしれないし、演出も時代考証も、キャラクタ描写もひと昔もふた昔も前の物とは言え、こういう題材は定期的にちゃんと作るべきだと思います。物…
「VORTEX ヴォルテックス」 年老いた老夫婦の晩年を二つのスプリット画面で延々と捉えていく特異な作品で、最初は入り込みにくかったけれど、いつに間にか映像のリズムに乗せられてしまいました。なんとも言えない不思議な感動をさりげなく感じて映画を見終…
「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」 めちゃめちゃ楽しい映画でした。ミュージカル仕立てと映画らしい豪華なセットというか美術が素敵だし、シンプルな物語にあったかい人間味と希望が溢れているのがとっても良い。作品として一級品の出来栄えではない…
「ファミリー・ディナー」 典型的なB級ホラー映画。何かが起こるのではという不穏な空気感で展開していくだけで、これという伏線も凝った演出もなく、ホラー映画だという先入観がラストまで観客を繋いでいく。そして、おそらくそうだったかというラストシー…
「市子」 非常に暗い題材の作品ですが、ラストはなぜがなんとも言えない切ない感情が伝わって来る。たくさんの登場人物を描いているにも関わらず、芯になっている物語がぶれないのは脚本の良さと演出の慣れということでしょう。自身の舞台を映像にしただけの…
「アマゾン無宿 世紀の大魔王」 なんとも珍妙な怪作。錚々たる大俳優たちが奇妙な仮装でコスプレして真面目くさって大立ち回り。しかもお話は無駄に世界規模でオールスターだからもう笑いが止まらない。名作映画を平気でパロディにしたり、あれよあれよと荒…
「ペルリンプスと秘密の森」 アニメ自体は素朴な作りですが、オリジナリティのある色彩と構図がシンプルなお話に彩りを作り出している感じの面白いアニメ作品でした。監督はアレ・アブレウ。 かつて、森にはペルリンプスというのがいたが、巨人がやってきて…
「ブラック・レイン」 初公開以来の再見ですが、当時はこの映画の面白さを理解していなかったかもしれません。アクション映画はこれくらいキレッキレでないとあかんと思います。無駄なシーンは思い切って削ぎ落として、それでいて見せ場は徹底的にハイスピー…
「父は憶えている」 静かな映画ですが、とっても良い映画でした。キルギスの国柄とかは詳しく知りませんが、近代化が進む一方で失われていくものと生まれてくるものが落ち着いた物語と流麗なカメラワークで描かれていく様はとっても美しい。監督はアクタン・…
「電話は夕方に鳴る」 軽妙などたばたコメディサスペンスだが、非常によくまとまっているのは流石に新藤兼人の脚本のうまさだろう。冒頭の軽やかな導入部から、いきなりの本編、そして全て終わって冒頭シーンに戻るという組み立ては絶品。楽しい映画でした。…
「ナポレオン」 大作らしい物量、エキストラを注ぎ込んだ壮大な歴史絵巻という感じの作品で、史実を忠実に淡々と描く一方で、ナポレオンの人間ドラマを英雄としてではなく一人の男として描いていく奥の深さは納得するのですが、史実では年上のはずのジョゼフ…
「リアリティ」 こういう映画を見ると,アメリカ映画の奥の深さを垣間見るように思います。裁判で公開されたFBI捜査官の記録した尋問音声をほぼ忠実にドラマとして再現した作品。リアルタイムで描かれる映像は主人公を演じたシドニー・スウィニーの演技力にか…
「シチリア・サマー」 ゲイ映画なので嫌いなのだが、この映画は思いのほか良かった。実話とはいえ、丁寧に書き込まれた脚本と演出、音楽を効果的に使ったリズム作り、脇役を絵の中に効果的に配置してその表情で語らせる絵作りが実に上手い。そしてそんなそれ…
「サムシング・イン・ザ・ダート」 いろんな映画があるもんやなというのを実感する作品で、ドキュメンタリータッチでもなくフィクションでもなく、監督二人が二人のキャストになって超常現象をカメラに収めるくだりを描いていくというものですが、結局なんな…